キーエンスPLCでヒーターのPID制御をする
ヒーターの温度制御を行う場合、専用の温度調節器(E5CCなど)を使用するのが一般的ですが、制御するヒーターが多くなるとその分温度調節器が必要になり、盤面に配置するのも大変になります。今回はキーエンスのPLCを使用して、ヒーターのPID制御をする方法を紹介します。PLCはKV-N40、温度の取込はKV-NC4TPを使用しました。
目次
制御対象の現在温度をPLCに取り込む
温度制御を行うため、現在温度をPLCに取り込む必要があります。今回は熱電対(K)をKV-NC4TPに接続し現在温度を入力しました。
PID専用命令を使用してヒーターの温度制御をする
制御対象の現在温度を基に、ヒーターの温度制御を行います。PID用の[PID]、[PIDAT]といった専用命令があるのでそちらを使用します。PIDに関しては専門ではないので詳しくは分かりませんが、[PIDAT]はオートチューニング機能があるので、定数も自動的に設定してくれます。
オートチューニングを使用してPIDに必要な定数を設定する
[PIDAT]にはオートチューニング機能があるので、オートチューニングに必要なパラメータを設定しオートチューニングをします。
オートチューニングに必要なパラメータ
・測定値:制御対象の現在値(今回は温度)
・設定値:PID制御の目標値
・サンプリング周期:PIDを演算する周期
・AT調整パラメータ:オートチューニングによるPIDの定数の「安定性」か「速応性」かを調整
パラメータを設定したらオートチューニング開始フラグをONする
オートチューニング開始フラグをONしオートチューニングを開始します。
オートチューニングが終了するとフラグがOFFになります。PIDに必要な定数が自動的に格納されます。
制御対象の現在温度を基にヒーターの温度制御をする
PIDの定数が決まったら実際にPID制御でヒーターの温度制御を行います。
[PIDAT]でPIDによる出力操作量を算出し、操作量に応じた時間分出力をONします。[TPOUT]という命令を使用すると、出力操作量をパルス出力に変換できます。実際には制御周期を指定して、出力操作量に応じた時間だけ出力します。
PID制御とON/OFF制御での温度波形
次のグラフは、設定温度を45.0℃とし、PID制御とON/OFF制御での温度波形をグラフ化したものです。PID制御は45.0℃設定でオートチューニングした定数を使用し、ON/OFF制御はヒステリシス1.0℃設定としました。ON/OFF制御では一度設定温度を上回り、その後設定温度の±1℃付近を上下していることがわかります。PID制御では設定温度まで徐々に昇温した後、ほぼ設定温度と同じ温度で安定しています。
PLCでヒーターの温度制御をするメリット・デメリット
メリット
・温度調節器が不要(制御するヒーターが多いほど有利)
・PLCで自動データ収集、管理ができる
・収集したデータをタッチパネルなどの表示器でグラフ化、表示ができる
デメリット
・制御プログラムの設計負荷が大きくなる
制御対象のヒーターが複数ある場合、温度調節器の購入費用、配線工数などを考慮するとPLCでヒーターの温度制御をするメリットが大きくなります。温度調節器が不要になることで、通常なら制御盤面に設置する温度調節器が無くなるので盤面もすっきりします。